Peter Washington (b), Kenny Washington (ds), 1996年10月録音
SteepleChase, SCCD31401
1.　Get Out Of Town
2.　Love Dance
3.　Yardbird Suite
4.　Angelica
5.　I Don't Want To Cry Anymore
6.　Serenata
7.　Gee Baby Ain't I Good To You
8.　Mean What You Say
9.　Why Did I Choose You
10.　Jitterbug Waltz
前作から、ピーター・ワシントンとケニー・ワシントンとのトリオを組んだわけですが、この三人でエリック・アレクサンダーの「ニューヨーク・コーリング」のバックを務めたのが事の発端。相性が、絶妙だと思います。ピーターとケニーが現代的で、シャープなバッキングをするところに、どちらかというと古風な（本質的にバッパーですよね）リチャードのピアノが泳ぐ。ちなみに、ピーターとケニーは兄弟ではありません。
本作では、いきなり一曲目の「ゲット・アウト・オヴ・タウン」のモーダルな雰囲気にノック・アウト。男に“この町から出て行って！”のせりふから始まるこのアルバムですが、全体を通して聴くと一通のラヴ・レターのよう。最後の「ジッターバグ・ワルツ」にいたっては、このままシングルノートの流れに身を任せていたくなります（ジッターバグ→ジルバのこと、作者のファッツ・ウォラーはオルガンでも弾いています）。しかし、選曲がいい・・・前作に比べちょっと肩の力が抜けて、幸せ度アップ（★★★★★）。

Peter Washington (b), Kenny Washington (ds), 1997年9月15日録音
Venus Records, TKCV-35111
1.　Softly, With Feeling
2.　Flamingo
3.　When I Fall In Love
4.　So In Love
5.　Lady Of The Lavender Mist
6.　I Didn't Know What Time It Was
7.　Born To Be Blue
「フラミンゴ」はテッド・グローヤがデューク・エリントンに書いた曲で（エリントンがらみの曲が多いですね）、近くはミシェル・ペトルチアーニがステファン・グラッペリと’95年に共演して再認識。印象的なメロディーを、丹念に弾きこんでいます。アップテンポの「ソー・イン・ラヴ」にしてもメロディーを綺麗に「うたって」いて、聴いているうちにちょっと泣けてくるのは筆者の年のせいでしょうか（？）。
録音はヴィーナス・レコードらしく押し出しが強い、これは好みが分かれるところ。ライナーノートにDIWから「アライヴァル」と「ダーク・ビフォア・ザ・ドン」を出していると書いてありましたが、後者はロニー・マシューズの間違い（★★★★）。

Peter Washington (b), Kenny Washington (ds), 1999年12月８日録音
Criss Cross Jazz, CRISS 1185 CD
1.　I'm Old Fashioned
2.　Blues For Kosi
3.　P.S. I Love You
4.　Once I Loved
5.　Half And Half
6.　Beautiful Friendship
7.　Daydream
8.　Is That So?
9.　Time After Time
10.　As Long As I Live
リチャード・ワイアンズによる、歌のないソングブック（＠71歳）。
三曲目ゴードン・ジェンキンスの「P．S．アイ・ラヴ・ユー」（裏ジャケットのコール・ポーターは間違い）。“誰がどんな風にやったかなんて覚えていない。ただ、40年代にウディ・ハーマン（オーケストラ）でマリー・アン・マッコールが歌うのを聞いて、その詞が印象的だった。親密で、まるで恋人に手紙を書いているみたいだったな。”と語っています。
四曲目「ワンス・アイ・ラヴド（O Amor Em Paz）」は、イパネマの娘でおなじみアントニオ・カルロス・ジョビンによる佳曲。ちょっとテンポを落とした演奏が、心に沁みます。
「ビューティフル・フレンドシップ」はソロでの演奏。ライナ−・ノートでエラ・フィッツジェラルドを回想しています。“私がエラと仕事していたとき、彼女は毎晩これを歌っていた。華麗（ゴージャス）な歌い方が最高だった。以来ずっと、心の奥にしまっているんだ。”
このようにしてスタンダードを、何百回と弾いてきたのでしょう。ここには時間の流れの中からこそ生まれる“美しさ”があります。謎かけのように「アイム・オールド・ファッションド」から始まりますが、「時代遅れ」と訳さずに、「古式」を材料とした表現と考えたほうがいいのかもしれません。ちょっと懐かしさを感じますが、決して古臭くはありません（★★★★★）。

Ray Drummond (b), Grady Tate (ds), 2000年4月6日録音
Savant Records, 
1.　Stolen Sweets
2.　As Long As There's Music
3.　Stairway To The Stars
4.　Focus
5.　Ivy
6.　What's New
7.　Drop Me Off In Harlem
8.　My Old Flame
9.　With The Wind And The Rain In Your Hair
10.　West 94th Street Funk
リーダー作としては、今のところ最後の作品。愛らしい「ストールン・スイーツ」から“す〜っと”何気なく始まります。二曲目の「音楽がある限り」も、第一作の演奏に比べ約半分（2分57秒！）。ゆったりと歌うような「星へのきざはし」。タッド・ダメロンの「フォーカス」、ホーギー・カーマイケルの「アイヴィー」は、いつもながらいい（しぶい）選曲。「ホワッツ・ニュー」は、しっとりとしたソロ。七曲目「ドロップ・ミー・オフ・イン・ハーレム」はデューク・エリントンの作、軽快なテンポが嬉しい。「マイ・オールド・フレーム」は昔日の恋の炎・・・。九曲目「雨の降る夜」は、グラディ・テートの元気なこと（68歳！）。最後の十曲目はオリジナル、これは“確信犯”（笑）。
このあと音沙汰がないな・・・と思っていたら、2002年録音の「An Eternity」（井島正雄）で再会！